世界の多様性(エマニュエル・トッド)とミニアメリカ文化考



10年くらい前にエマニュエル·トッド氏の本をよく読んでいました。あるコミュニティで彼の話が出てきて懐かしく思いました。写真の本は世界の様々な地域の家族形態について詳しく書いてある本で 全部で500ページ以上ある大著です。それぞれの文化の家族形態が政治や宗教、国家の運営などに影響を与えていることが詳しく書かれていますが、心理専門の私が印象的に覚えているのは、家族形態によって有効な心理療法も変わってくると言う点です。


フロイトによる精神分析は、直系家族の文化の中で生まれたので、親子の関係(直系)には注意を向けているが、兄弟姉妹の関係には注意を向けてないのだと述べています。そのため兄弟姉妹の連帯が強い中国やイスラム圏では精神分析がうまく理解されないとのことです。日本は 直系家族の文化だったために比較的精神分析が根付いたのかもしれません。


さてこの大著、時々スッと頭に入ってこない文章があったので、これは日本語に翻訳されているからかなと思い英語の翻訳本を見てみようとアマゾンで探してみたことがあります。でも彼の本はほとんど翻訳されていませんでした。


日本であれだけ人気があるのにアメリカでの知名度が低いことにびっくりしました。英語で 読める良い本がたくさんあるのでわざわざフランス語の本を翻訳するニーズがない と言うのは1つの理由だと思います。もう一つは 日本人は世界(特に西洋)と比べて自分がどういう位置づけになるかということにとても興味がありますが、アメリカ人はそのことにほとんど興味がないからではないかと思います。


日本人は昔から日本文化論が好きで、日本の大学院にいた頃には土居健郎の「甘えの構造」、河合隼雄の「中空構造日本の深層」、その他いくつかの日本人論は課題図書の中に入っていました。私自身も日本文化について比較文化的に考えることにとても興味があります。そんな土壌があって日本の家族形態や社会のあり方にも言及するトッド氏に日本人は興味を持ったのではないかと思います。


一方アメリカ人によるアメリカの比較文化論はほとんど見た覚えがありません。 アメリカのメジャーリーグの優勝決定戦をワールドシリーズと言ってしまうように、基本が自分たちが世界の中心にいると思っているので、自分たちが世界の人からどう見られるかと言うことに興味がないのではないかと思います。だからトッド氏の本も 大して話題にならなかったのではというのが私の今の所の仮説です。これがアメリカの家族形態とどう結びついているかまでは考察できていません💦


そういうアメリカに住んで良かったことは 人の目をあまり気にしなくて良いことです。 ある意味、みんなが世界の中心なので(笑)他の人のことを気にしていないんです。そんな文化に慣れてしまっているので、約1週間後控えた日本帰国を考えると、こんなカジュアルな服でいいのか、グレーが混じった髪で大丈夫かなどちょっと心配はあります。でも無理して社会の期待に合わせず、自分の多様性も大事にして楽しみたいと思います。

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